ボクは桜、キミは唄う
「ピアノ弾いてなかったら、歌ってる楓花を見つけたもん」

「じ、じゃあ音楽祭に私が欠席してたら?」

「6年で見つけた」

「6年も欠席だったら?」

「中学入って見つけた」

「でも、ピアノ弾いてない私は何もないもん」

柚木君はそんな私の言葉に、何言ってんの?って笑うと

「ピアノ弾いてなくったって、楓花って人間がいなくなるわけないじゃん」

って。

俺は“工藤楓花”が大好きなんだよって、いとも簡単に言い放った。

そして

「そんなことで不安になって泣いてるの?」

ばかだなぁって、笑い飛ばしてくれる。

けど、私の鞄から飛び出しているものを見つけると、表情を曇らせた。

「それより、俺の方が不安なんだけど」

言いながら指を差すのは、脩くんに貸していた辞書。

「信じてるけどさ、信じてるつもりだけど、でも、飯田先輩、なんでいつも楓花に辞書借りるの?」

「?…なんでだろ?」

「はぁ?」

< 107 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop