ボクは桜、キミは唄う
「けど、俺のせいで嫌な思いさせてるのかなって、ちょっと考えちゃって」

「ううん。靴を隠されたりとかそういうのは嫌だけど、でも」

「でも?」

恥ずかしいけど、柚木君がちゃんと気持ちを言葉にしてくれたなら、私も…伝えてもいいのかな。

「でも、本当はもっと、特別扱いしてもらいたいって思ったりしてた。彼女なんだって実感したいっていうか…。

他の女子が柚木君に話しかけるだけで、ちょっと焼きもちも妬いたりして。

だから、名前で呼んでくれて、みんなに彼女だって言ってくれて嬉しかった」

あれ?これ、言っちゃダメだったかな?柚木君からの返事が何もなかったから、私は慌てて訂正した。

「あ、でも、話すのとかは仕方ないし、それをダメとか言ってるわけじゃないよ?だけど、私ちゃんと彼女になれてるのかなって、不安もあったりして。だから、名前で呼んでくれて一気に特別な感じがして、嬉しかった」

「──良かった」

柚木君はふーっと息を吐き出して、少しだけ私から離れた。

あれ?怒ってる?

「怒った?」

私はまた不安になって、柚木君の顔を覗き込んでみた。

「いや、ダメだから!」

けど、手のひらでおでこを押し返される。

なんで?

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