ボクは桜、キミは唄う
「夏休み前に合唱コンクールがあるだろ?」

クラスごとに課題曲と自由曲を唄って、競い合うという中学校での行事らしい。

「んで、お前伴奏やってくんないかな?」

「え?」

「他にできそうなやついないしさ、頼むよ」

「や、でももっと上手な人もきっと……」

「いない!」

断りかけた私の言葉は力強い先生の声に打ち消された。

「いないだろ?」

先生は柚木君に同意を求める。

先生の視線に合わせて柚木君を見ると、一瞬目が合ってしまった。

すぐに柚木君がそらしてしまったけど。

「はい。い、いと思います」

「なんだ?そのロボット口調。男ならビシッと行け、ビシッと!」

先生は柚木君のお尻をペシッと叩く。

「ってぇ。山崎、ふざけんなっ」
< 19 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop