ボクは桜、キミは唄う
あれからマネージャーの嫌がらせはパタッとなくなった。

柚木君と別れたんだから当然か。

脩君も、

『もう、私にかまわないで』

あの言葉を守り、教室に顔を出したり、辞書を借りに来る事もなくなった。

そして、卒業式の朝。

廊下ですれ違った脩君に、一言「ごめんね」と伝えられたんだ。

何に対するごめんなのかはわからないけど、振り返って見た脩君の背中がやけに小さくて、私は思わず

「ごめんね」

脩君と同じ言葉を口にしていた。

それも、何に対するごめんなのか、自分でもよくわからなかったけど。

脩君は立ち止まって振り向くと、ふんわり微笑んだ。

それは私が小学生の頃、初めて脩君からもらった笑顔と同じで。

脩君が“男の人”から“お兄ちゃん“に戻ってくれたような気がした。

そう思うのは、私の勝手な解釈でしかないのかもしれないけど。
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