ボクは桜、キミは唄う
見ると、ボーッとしていたのか、飛んできたボールが柚木君の顔面にちょうどぶつかるところだ。

「うあぁぁぁっ」

ズテン。

ボールと一緒に転がる柚木君に、私達はまた顔を見合せて大笑いした。

気づいた北川君が、私達を指差しながら笑う。

柚木君は、こっちを見上げて、そして、恥ずかしそうに目をそらし、泥だらけのボールを北川君に投げつけた。

そこからはサッカーじゃなくてボールの投げ合いで、いつの間にか泥のぶつけ合いになっていた。

こんな光景を目にすると、平和だなぁって思う。

ずっとこんな日々が続けばいいのに。

ナカちゃんの隣で、柚木君と北川君の笑顔を見て、一緒に笑っていたい。

「私、M高に決めたよ」

「うん」

ナカちゃんは、ずっと迷っていた進路を、やっと最近決めたらしい。

柚木君と北川君と同じY高にするものと思っていたのに。

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