ボクは桜、キミは唄う
「え?知ってた?」

「知ってたも何も……私が転校する前日にさ、柚木と二人で告白する段取り話し合ってたんだよ。コッソリのつもりだったのかもしれないけど、丸聞こえ。どうしようかと思っちゃった」

「じ、じゃあ、ナカちゃん、その時から告白待ってたの?」

「待ってた……のかな?」

ナカちゃんはヘヘッと、他人事のように笑った。

「私さ、中2の最初に、たまたまあいつと教室で二人きりになった事があって、『私の事好きなら付き合ってもいいよ』って言ったんだ。本当可愛いげない言い方しかできなかったんだけど」

「ナカちゃん……」

「そしたらあいつ、転校生来たよねって話そらされて、アキちゃんって子可愛いよねとか、好きになりそうとか……。結局ふられたんだ、私」

ナカちゃんは、必死で平静を装ってるみたいだけど、揺れる瞳が本心を語ってる。

「カッコ悪くて、楓花に言えなかったんだけどさ」

手を止めて、ふぅーと吐き出すため息は、ナカちゃんにとっての涙なんじゃないかって思った。

「彼女の振り頼んだってことはさ、私に諦めさせるためでしょ?きっと。そんなめんどくさいことしないで、ハッキリと振ってくれればいいのにさ」
< 225 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop