ボクは桜、キミは唄う
柚木君の顔を見ると、私はすぐに弱くなってしまう。

それじゃ、ダメなのに。

強くなるって、今決めたばかりなのに。

「うっ……」

突然泣きそうになる私に、柚木君は

「どっかぶつけた?大丈夫?どうした?」

おろおろ。

ごめん、柚木君。

私は、柚木君に心配かけて、困らせてばかりだ。

柚木君はいつだって、私をこうして助けて守ってくれていたと言うのに。

これ以上、柚木君は何を守るって言うの?

しっかりしなきゃならないのは、私の方なのに。

ぐっと涙をこらえると

「柚木君、」

決心を伝える。

「うん?」

「いっぱい、ありがとう」

「え?」

「私ね、柚木君と出会えたから、楽しいことも幸せなことも何倍も大きく感じられたの」

「……楓花」

「辛いこともあったけど、そんなの吹き飛んじゃうくらい、私は柚木君といられた時間が幸せだった」

「……」

「もっと、ちゃんと、柚木君が安心できるくらい強くなるから」

誰かに合わせるんじゃなくて、自分自身で、今、自分が一番したいことを、まずは精一杯頑張ろう。

「私」

ちゃんと自分の足で歩かなきゃならないんだ。

自分の決めた道を、自分を信じて。

守られるんじゃなくて、私があなたを守れるくらいに強くなる為に。

「K高に行く」

例え、選んだ道が、柚木君の進む道と違ったとしても。

「音大を目指したいの」


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