ボクは桜、キミは唄う
ガラガラッ──


突然、後ろの扉が開き、

「工藤さんだーと思ったらなんだよ、柚木もいたの?」

佐々木くんが図書室に入ってきた。

そして、固まってる私達を交互に見て、「勉強する気ない人のための場所じゃないよ?ここ」と言って私の隣に座る。

そうだ。

受験前の大事な時期に、告白なんかしてる場合じゃない。

佐々木君の登場に救われた。

来てくれなかったら、きっと止められなかったもん。

好きだよって伝えて、柚木君しか見えなくなっていた。

志望校も変えて、柚木君とずっと一緒にいられたらって考えちゃったはず。

それは、柚木君の望んでくれた未来にはならない。

「や、やっぱり、用事思い出したから、帰るね」

私は慌てて参考書を鞄に突っ込むと、そのまま振り返らずに図書室を飛び出した。


もしも、佐々木君が来なかったら、私──


階段を降りると、玄関にはまだアキちゃんとナオちゃんの姿があった。

「勉強、するんじゃなかったの?」

私の顔を見て少しホッとしたような表情になったのは、ナオちゃん。

「うん。やっぱり家の方が落ち着くかなと思って」

「そっか」
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