ボクは桜、キミは唄う
ナカちゃんは鏡を覗き込むと、うっすらピンク色のリップを口に塗ってから前髪を整えた。

「楓花もつける?」

リップを私に向けるけど

「いい」

断った。

今日の私は散々だ。今日始まった事じゃないけど。

でもリップつける余裕があったら転ばずに歩く練習するべきじゃないかって……そんな気がして。

「けど朝は本当ウケた。まさかあんな派手に転ぶとはねぇ」

「もう言わないで。恥ずかしすぎる」

「ぶぶぶっ。けどあの時の柚木がさ。ぶぶっ」

柚木?

「柚木君……見てた?」

どうか見てなかったと言って下さい。

「声押し殺して笑っててさ」

終了〜。

「しまいにお腹抱えて大笑いで」

チーンッ。

「けど」
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