ボクは桜、キミは唄う
入試を終えて、最初の登校日。

「楓花!おはよう」

ナカちゃんが真っ先に玄関先で私を迎えてくれた。

早く来たはずなのに、ナカちゃんの方が早かったみたい。

「後少ししか通えないと思ったらなんか早起きしちゃってさ」

ナカちゃんも北川君と別々の高校だもんね。

一緒に過ごせる今が貴重なのかも。

「そう言えばさ、ザリガニが脱皮してたんだよ」

ナカちゃんは嬉しそうに言う。

1年の時飼っていたザリガニは残念ながら他界してしまったけど、そのザリガニが産んだ卵が孵って、また大きくなってきたんだ。

「また脱皮?すごいね」

あの時、私はザリガニを羨んだ。

私も脱皮して、もっと美しく産まれ変われたらいいのにって。

でも、羨む必要なんかなかったんだ。

私達は気持ちさえ強く持てば、いつだって脱皮できるんだから。

つまづいても、立ち止まっても、振り返って時には後戻りしてしまっても、諦める事さえしなければ、いつだってその皮を脱いで、強い自分に産まれ変われる。


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