ボクは桜、キミは唄う
とりあえず、私の入試の感触を、お世話になった先生に伝えなきゃ。

でも、その前に、もうひとつ。

ナカちゃんの力を借りずにしたい事があった。

私はナカちゃんの姿が見えなくなった事を確認すると、柚木君のクラスの靴箱へ急いだ。

良かった。まだ来てない。

昨夜はいろいろ考えて眠れなかった。

そしてやっと書き上げたのは

『放課後、音楽室で待ってます』

という、シンプルな手紙。

書きながら、1年の頃、北川君が書いた手紙を思い出した。

あの嘘の手紙がきっかけで、私達は付き合う事ができんだ。

懐かしい。

『待ってて』

『待ってるから』

あの約束はまだ有効なのかはわからないけど。

もしかしたら、あの言葉にそんなに深い意味もなくて。今はもう他に好きな人がてきてしまったかもしれないけど。

本当に私自身強くなれたかどうかはわかんないけど。

こんな私で安心させられるかどうかもわかんないけど。

でも、あなたが好きです。

ちゃんと、伝えたい。

柚木君の上靴の上に、そっと手紙を乗せた時。

「楓花ちゃん?」

突然背後からかけられた声に、ビクッと体が揺れた。

ただでさえ緊張するこんな時に。

< 295 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop