ボクは桜、キミは唄う
卒業証書の代わりに画用紙を受け取り、礼をする。

前髪がまた少し伸びた。

さらに大人びた柚木君の姿は私の胸を震わせる。

私は昨日、背中まであった髪の毛を肩まで切った。

私は幼くなる一方かも。

髪の毛に触れてみると、切り立ての毛先がそろっていて、妙におかしくなった。

幼稚園児みたい。



放課後はあっという間にやって来てしまった。

ナカちゃんが帰り支度しながら

「今日、アイツの家行く事になってるんだけどさ」

と言う。

ナカちゃんの言うアイツとは、北川君の事だ。

照れ屋なナカちゃんは未だに北川君を名前では呼ばない。

「せっかくだから、楓花も一緒に行かない?ほら、みんな誘ってさ」

何を言ってるんだか。

いつもお姉ちゃんみたいに私を引っ張って行くナカちゃんも、恋の事になったらまだまだお子様だ。

北川君の前で少しも甘えた事がないし。

たまには女の子らしくしようよって、言うんだけど、

「私があいつに甘えるなんて、キモい!!」

って、首をぶるんぶるん振っていた。

「もう、ナカちゃん、私まで一緒に行ったら北川君カンカンだよ?ただの邪魔者じゃん。ナカちゃん、そろそろ彼女っていう立場わきまえてこうよ。

北川君は絶対二人きりになりたいんだってば」
< 299 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop