ボクは桜、キミは唄う
──
────……

最初の30分は、ずっとそわそわ。

心臓が高鳴り過ぎて壊れちゃうんじゃないかって心配するほどに。

でも、柚木君は現れなくて。

次の30分は不安と緊張に押し潰されそうになりながら、扉を見つめていた。

そして、見飽きた時計をまた見上げた時。

やっと、音楽室の扉がゆっくり開いた。

私がここに来てからすでに1時間半が経過している。

来てくれないかと思った。

柚木君……。

緊張と期待で胸を膨らませて扉を見つめる。

その先に、懐かしい柔らかな笑顔があることを信じて。



──けれど。

その扉から顔を覗かせたのは、柚木君ではなかった。

柚木君には似ても似つかぬ顔。

どうして?

私は力の入っていた肩をすっと下げて、問いかけるしかなかった。

「佐々木君?」

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