ボクは桜、キミは唄う
柚木君の代わりに音楽室に入ってきたのは、佐々木君で。

なぜか

「なんかよくわかんないんだけど、教室にいたら清水さんから、何も訳を聞かずに『困ってる』って工藤さんに伝えて欲しいって言われてさ」

なんて言う。

清水さん?

「ナオちゃんが?」

「うん。何?どういうこと?俺さっぱりわかんないんだけど。とりあえず伝えろってさー」

「ほ、他に何か言ってた?」

「他に?あー……うんと『手紙もらっても、いつの間にか過去になっちゃってて、無理』とか。つーかまるで意味わかんないって言ったんだけど、伝えたら楓花ちゃんならわかるはずだからってさぁ」



──過去になったから、無理……



どこかで期待していた気持ちがガタガタと崩れていく音が聞こえた気がした。

「清水さんと喧嘩したの?」

「ううん。ううん、違うの」

「直接言えば?って言ったら、楓花ちゃんを傷つけることになるから、慰め役が必要なんだとかってさ。

俺で慰め役が務まるのかな?」

目の前が真っ暗になった。

あぁ、私はこんなにも期待して自惚れていたんだって、この時やっと気づいた。

だから、想像してたのと真逆の結果に、為す術が見当たらない。

音楽室に来る柚木君の顔を想像して、ドキドキしてた。

恋の神様に、願っていた。

そして。

そして……。



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