ボクは桜、キミは唄う
「いい天気だね」

「うん」

久々に暖かい陽射しを感じて、春はもうすぐそこまで来てるんだって思った。



──表面上の言葉じゃなくて、あいつの本心見抜いてやってよ。



青く澄んだ空を見上げながら、北川君のさっきの言葉の意味を考える。

私はまだ、頑張ってもいいんだろうか?

もっとしっかり見つめたら、言葉とは別の、柚木君の本心を見つけられるんだろうか?





──好きな人に好きって伝えてみてよ。





しつこいって、思われないだろうか?

またフラれるんだろうか。

2度あることは3度ある?

それとも、3度目の正直?



私は歩いていた足を止めた。

この先、右へ行けば柚木君の家がある。

真っ直ぐ進めば、私の家。



私が立ち止まったことに気づいた佐々木君は、振り返ると私に近づき。

そして、そっと私の背中を右方向へ押し出す。

「行っておいで」

「佐々木君……」

「泣かされたら、受け止めてあげるから」

ごめんね。佐々木君。

私はあなたに甘えてばかりだけど。

ありがとう。

私は踏み出した1歩を無駄にしないように、ためらう気持ちに負けないように、その勢いでもう片足を振り出し、そのまま駆け出した。
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