ボクは桜、キミは唄う
「あんたは人の事はいいの。自分の事だけできてやっと一人前なんだから。ほら、ぐだぐだ言ってないで行くよ」

ナカちゃんは意地っ張りだ。

ぶーぶー言いながらナカちゃんと私が教室に入ろうとした時

「あーいたいた。楓ちゃん、英和辞書持ってる?」

2年の飯田脩(イイダシュウ)先輩が私に聞いてきた。

「英和?今日は英語ないから持ってないよ?」

脩君は1つ年上の先輩だ。

小学生の時、同じ委員会に出席した事がきっかけで仲良くなったんだ。

以来、何かと私の事を気にかけてくれて、独りっ子の私のお兄ちゃん的な存在でいてくれてる。

去年はよく小学校に遊びに来てたっけ。

それでもあまり接点がなかったから、少し疎遠になってたけど。

今年の4月からは同じ学校になったから、会う機会も増えて、また前みたいにいっぱい話すようになったんだ。

「なんだ、残念。んじゃあ他のクラスに聞いてみよー」

「おかしー。階が違う私のとこ来るより、2年生の誰かに借りた方が早いのに」




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