ボクは桜、キミは唄う
卒業証書授与式。

体育会に移動した私達は、吹奏楽部の演奏に合わせて入場した。

いつもはジャージ姿の山崎先生も、今日はビシッとスーツで決めて、胸につけた花が妙によそよそしい。

体育館までも、紅白幕を着せられて緊張した面持ちで私達を迎え入れていた。

今日でこの学校とも、この制服ともお別れ。




ひとりずつ本物の証書を受け取って、席につく。

「柚木遥斗」

三浦先生の呼ぶ名前に、また胸が震えた。





最後に歌った校歌は、みんなの声が震えて聞こえた。



耳を澄ませば柚木君の歌声が聴こえるような気がして、そっと瞼を閉じた。
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