ボクは桜、キミは唄う
後で話したいことがあるの。

後で話したいことがあるの。




式を終え、教室に戻る間も、柚木君の姿を探しては、さっき考えたセリフを呪文のように唱える。

けれど。

やっと見つけた柚木君は、後輩の女の子と廊下の隅で何かを話していた。

泣いてる女の子。

きっと、柚木君のことを好きな子。

そして困ったように「ごめんね」を繰り返す柚木君。

その表情があまりにも辛そうで、私はその場を逃げるようにして、トイレに駆け込んだ。

私の告白も、あんな風に柚木君を苦しめるんだろうか。

「はぁ」

怖い。

伝えなきゃ。伝えたい。

でも、怖い。

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