ボクは桜、キミは唄う
しばらくその場を動けなかった私は、体育館から教室へ移動し始めている、卒業生の親族の姿がちらほら見え始めたことに気づき、慌てて教室へ戻った。

「ちょっと楓花、どこ行ってたの?」

「え?あ、ちょっと」

すぐに山崎先生が教室へ入り、話を始める。

ナカちゃんは後ろの席から背中をツンツンして「メール見て」と小声で伝えてきた。

メール?

鞄の中をゴソゴソ。

あれ?

そうだ、今朝携帯見たら充電がなくなってて、充電器に差してそのまま慌てて学校来たから。

「携帯忘れた」

振り返り、私も小声で伝える。

「はぁ??」

「中里~。なんだ、俺が卒業おめでとうって言ってんのに、なんか文句あるかー?」

ナカちゃんはいきなり大声を出すから、先生が睨みをきかせる。

「す、すいませーん」

「楓花~肝心なときに忘れないでよぉ」

でもすぐにまた私に話しかける、めげないナカちゃん。

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