ボクは桜、キミは唄う
「肝心なとき?」

「もぉ」

ふくれながら、ナカちゃんはこんなことを言った。

「昨日から、柚木が楓花にメール送ってる」

「えぇ??」

今度は私が大声をあげてしまった。

「お前ら~最後くらい俺の話聞いとけよぉ」

山崎先生が突っ込む。

「す、すみません」

でも、でも。

「ほ、本当?」

やっぱり振り返ってナカちゃんに確認せずにはいられない。

「本当。今も、柚木来てたんだよ。楓花のこと待ってたのにどこ行ってたんだよー。メールしても返事ないからってへこんでたよ」

「柚木君が?」

どうして?

「いい?これ終わったらすぐ柚木の教室行きなよ?」

「う……うん」

柚木君が、私にメールを?

高鳴る胸の音。

充電するときにどうしてメールチェックしなかったんだろう?

メール、どんな内容だったんだろう?

本当なら、最後の先生の話はすごく大切なはずなのに。

早く終わって~と願ってしまう。

先生の話が終わると、ひとりずつ先生に花を1輪渡し挨拶をする。

山崎先生は私の花を受け取ると

「ソワソワしすぎ」

と笑った。

「今度ゆっくり遊びに来いよ。今日の話をもう1度してやるから」

「また長話ですか?」

「またとか言うなよー。少しは俺の話に感動しろ」

「すいません。へへ」

全員が花を手渡し、最後のホームルームを終えるチャイムが鳴った。

「楓花、急ぎなよ」

後ろからナカちゃんが急かす。

「うん」

< 344 / 366 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop