ボクは桜、キミは唄う
先生が、みんなにさようならを伝えたので、よしと立ち上がり、教室を飛び出す。

同じように一番先に隣の教室から飛び出してきたのは、柚木君だった。

けど、私は柚木のその姿を見て力が抜けてしまった。

学ランの前が全開で、Tシャツがまる見え状態。

全部のボタンを無くしてる柚木君。

第2ボタンどころか、もう全部のボタンをみんなに配っちゃったのかな。

最後の1つも残らなかったんだ……。

柚木君が私に近づき口を開いた時。

「柚木、ちょっといい?」

柚木君を呼ぶ声がその後ろから聞こえた。

柚木君と同じ陸上部の田辺さんだ。

「え?あ、今ちょっと」

「すぐ終わるから!」

田辺さんは柚木君の手に腕を回すと、そのまま無理矢理引っ張って行ってしまう。

「ちょ、ちょっと、何だよ??」

「いーから!」

告白だ、と、咄嗟に感じた。

その時、今度は私の後ろから

「ごめんなさいっっ!」

叫ぶように謝る声が背中から降ってきた。

「え?」

驚いて振り向けば、そこには泣きはらしたナオちゃんの顔がある。

「ちょっとちょっと~。今大事なときー。ナオ、話なら後にしてよ」

その間をナカちゃんが割って入る。

「いいから、楓花行きな。田辺にとられてどうするの?」

ここはまかせて!ってヒーローみたいに、私を逃がすナカちゃん。

でも、

「ごめん。楓花ちゃん、私ウソついた」

ナオちゃんの言葉に、私もナカちゃんも動きを止めた。
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