ボクは桜、キミは唄う
なんでだろ?

言いたい事はいっぱいあるのに、柚木君の前ではうまく言葉にできない。

伝えたい事もいっぱいあるのに、声にならない。

ありがとう。

ごめんね。

たったそれだけのことも、言えなかった。

くじいた足よりも、胸の奥の方がずっと痛む。

立ち止まったまま、柚木君の背中を、見えなくなるまで見送った。

バイバイも言えなかった。

「私、人として、どーなの?」

柚木君の背中はもう見えない。

「人として」

せっかく送ってくれたのに。







迷惑なんかじゃないって言わなきゃ。

ちゃんと言わなきゃ。

ありがとうもごめんねも、バイバイも、また明日、も。

嫌われたくないからってこんなサヨナラの仕方、いいわけない。

送ってくれて、本当は嬉しかったんだって、伝えなきゃ。

思うより先に、私の足は柚木君の後を追い掛けていた。

「いたっ」

足は痛むけど、このままじゃダメだ。

絶対ダメだ!

片足を引きずりながら、柚木君と歩いた道を1人で戻る。

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