ボクは桜、キミは唄う
結局、見えなくなった柚木君の背中を追いかけて学校まで戻ってきてしまったけど、柚木君の姿はどこにもない。

グラウンドはサッカー部が占領していた。

体育館はバレー部とバスケ部でいっぱいなはず。

陸上部はどこで練習してるんだろ?

靴を履き替えながら考えていると、廊下の端からパンッと手を叩く音と同時にダダダダッと駆け出してくる足音が聞こえてきた。

陸上部?

咄嗟に靴箱の影に隠れる。

すると、2人ずつ順番に走ってくる陸上部員の姿があった。

柚木君は5回目のパンッで、北川君と一緒に走って来た。

速い……。

私が来るまでも何度も繰り返し走っていたんだろう。

額から汗が流れていた。

走っている姿は真剣で必死で。

でも走り終えると北川君と大笑いしてプロレスごっこみたいな事をしている。

楽しそう。

私の隣でも、あんな風に笑ってほしかったな。
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