ボクは桜、キミは唄う
そして、私からタオルを引っ張って奪うと、そのまま横をすり抜け走って行ってしまった。

マネジャーがニヤッと私を見てから

「はるくーん」

その後を追う。

ぽつんと残された私は、追い掛けるどころか、柚木君の背中を見る事すらできない。

誰かに嫌われるというのはどうしようもなく悲しい事だけど、でも悲しいを通り越して、こんなにも胸が苦しいのはどうしてだろう?

私を見る柚木君の冷たい目が、トゲとなって、心をチクチク突き刺す。


ポンッコロコロ。

突然、サッカーボールが、しゃがみこむ私の目の前を転がって来た。

見上げると、その先に脩君が立っている。

なぜたか悲しげに見つめる脩君に、今の自分の気持ちが重なって、涙が込み上げて来た。
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