ボクは桜、キミは唄う
私?でも書いた記憶はないし、第一、私の字じゃない。

キョトンとメモを見つめていると、柚木君はハッとして、メモを裏返し、

「あーーっっ!やられた」

と言って、突然頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

柚木君の手元を見ると

『うそだぴょーん。北川新君でしたー』

と書かれた、裏返されたメモがある。

騙された?

なんで?

「これ、靴箱に入ってたんだけど。あいつー」

うなだれ、頭をグシャグシャする柚木君。

でも、北川君の嘘に、私はむしろ感謝していた。

でなきゃ2度と柚木君とは話せなかったような気がする。

「練習するんでしょ?邪魔しちゃった」

はぁ、とため息をついた柚木君は、鞄を引きずるようにして立ち上がり、音楽室の扉に手をかけた。
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