ボクは桜、キミは唄う
「だって柚木君、私がいると笑わないんだもん。私が近くにいると無口になっちゃうんだもん。だから私嫌われてると思ってて。職員室行くのもきっと嫌だろうなと思ったら一緒に行こうって言えなくて。昨日も柚木君優しいから送ってくれただけで、本当は嫌なんだろうなって思ったらだんだん苦しくなっちゃって」

柚木君は目をまるくして私の話を聞いていた。

「だから送ってくれたのも、迷惑だなんて思ってなくて。その逆で。本当は嬉しかったんだけど、でもそれもうまく伝わらなくて。だから私ちゃんと話さなきゃって思って昨日柚木君を追い掛けたの。けど追いつけなくて、学校まで戻ってきちゃって。そしたら部活始まっちゃってたから話しかけられなくて。それで……」

うまく順序だてて説明できなかった。

ちゃんと伝わるかな。

「それで、部活終わるまで待ってたらグラウンド行っちゃって」

「ちょっと待って」

柚木君は私の話を一度止めると、頭の中を整理するように一呼吸置いて

「俺を、待ってたの?」

聞いてきた。

私は柚木君と目を合わせると、ぶんっと大きく頷いた。
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