ボクは桜、キミは唄う
「待ってたのに、やっぱり話せなくて。だからもう無理だと思った」

そこまで言うと、固まってた柚木君の顔がみるみるうちに笑みに変わる。

「なんだ……」

いつも友達と楽しそうに話している時の笑顔。

「なんだぁ」

私の前じゃ絶対しなかった笑顔。

「そっかぁ」

柚木君は笑いながら納得したように何度も1人で頷いていた。

キューッ。

その時、柚木君の後ろの扉がゆっくり開いた。

でも数㎝だけ開いたまま止まる。

そしてその隙間から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「しっ。ばれたらどーすんの?」

「けどこれじゃあ見えないじゃん」

「今こっそり様子伺うから、ちょっと待って」

ヒソヒソ話をしてるみたいだけど、丸聞こえ。
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