ボクは桜、キミは唄う
「はいはい。んじゃ、工藤ちょっと弾いてみてよ。軽くでいいからさ」

う……まだ1度も練習してないなんて言えない。

でも5年の時弾いたし、指が覚えてるかな。

「はい」

私は椅子を引くと、浅く腰かけて鍵盤に指を乗せた。

遠くから感じる柚木君の視線が痛い。

緊張……。

でも音楽祭で弾いた時も同じような程よい緊張感があった。

広い体育館で、グランドピアノ。

いつも家で弾いている時よりずっと深くて広いピアノの声に、私は酔いしれたんだ。



みんなの歌声に合わせて、目立ちすぎず単調すぎず。

最初練習した時はなんて難しいんだろって思ったっけ。
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