ボクは桜、キミは唄う
私の見つめる方向とナカちゃんの視線がいつも一緒だから、てっきりナカちゃんも柚木君を好きなんだと思ってしまったけど。

よく考えたらわかる。

私達は同じ方向の別の人を見てたの。

柚木君といつも一緒にいる人。

最近彼女ができた人。

だからナカちゃんは気を紛らすためかのように、携帯に夢中になってる。

「ナカちゃんの好きな人って、北川君?」

私はノートの隅にシャーペンで書くと、トントンとナカちゃんに知らせて、見せた。

ガラガラガッシャーンッ

ナカちゃんの手元から携帯が滑り落ちる。

初めて動揺を見せたナカちゃんはなんだかすごく乙女で、可愛い。

「私、アキちゃんと付き合う北川君は好きじゃない。ナカちゃんと一緒にいた北川君の方が北川君らしかった」

私はさらにノートに書き足した。

読んで固まったナカちゃんは寂しそうに笑って、鳴り出したチャイムを聞いて前を向いた。

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