ボクは桜、キミは唄う
「楓花?どした?」

少し寂しげな私に気づいたのか、柚木君が不安そうに顔を覗き込んでくる。

「ん?ううん。なんでもないよ」

柚木君は、ナカちゃんの気持ち気づいてるのかな。

「今日さ、用事ある?」

「用事?ううん?」

「んじゃさ、俺んち、来る?」

「え……」

初めて誘われた。

今まで一緒に帰る事があっても、家の前でいつもすぐバイバイで。

携帯の番号を交換したのも、付き合って半年経ってからだった。

それからたまに夜電話したりメールしたり。

けどまだデートとかそういうのがまるでなくて。

ゆっくりゆっくりな、私達。

「いや?」

柚木君が不安そうに聞く。

「う……ううん。嫌じゃない!」

「そ?じゃあ一緒にガリガリ君食おう!」

ガリガリ君?
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