ボクは桜、キミは唄う
さっきの北川君の『ぶっちゅーっとな』を思い出して、ドキッとしたけど。

そんな事考えてる自分が急に恥ずかしくなった。

「あ、ガリガリ君、嫌だった?やっぱ板チョコモナカ?」

「ぷぷっ」

「あ、違う?じゃあジャイアントコーン?」

「ぷぷぷっ」

「何なに?ハーゲンダッツ?」

柚木君はどこまでいっても柚木君のままで、そのままなんだ。

柚木君の家の向かい側に小さな佐藤商店っていうお店があって、帰り道、制服のままそこに立ち寄ると

「おばちゃん、つけといてー」

なんて言って、柚木君はガリガリ君を2つ、お金を払わずにつかんだ。

「あいよー」

奥からおばちゃんの声がした。

お馴染みらしい。

ニヒッと笑った柚木君は、いたずらしてる子供みたい。

そして

「溶けちゃうっ」

柚木君は片手にガリガリ君を2つ摘むようにして持つと、空いた片手で私の手を握って走り出した。




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