ボクは桜、キミは唄う
初めて、手……繋いじゃった。

前に私が足をくじいた時、掴まれた腕が熱くてどうしようって思ったけど。

真夏に握る手はそれ以上。

毛穴という毛穴から汗が噴き出してきた。

ど、どうしよう。

その手は家についてもそのままで、玄関の鍵を開けた柚木君は器用に足を使ってドアを開けると、

「どーぞ」

と言った。

「お母さん、いないの?」

「ん?うん。うち、共働きだから。夜まで帰らないよ」

「うちと一緒だ」

「そーなの?」

初めて入る柚木君の部屋はゲームや雑誌が散らばっていて、お世辞にも綺麗とは言えないけど、男の人を感じる空気がそこにあった。

あぁ、柚木君は男の子なんだなって、改めて思ってしまった。

当たり前の事、なんだけど。

「あ、ガリガリ君、溶けちゃう」

そこで柚木君は私の手を放した。

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