海上船内物語
死神船から逃れていく船を見つけ、カイルは動きが止まった。
「・・・・・・にげる?・・・・・・・にがさない、」
アランの剣からふらりと避けきり、逃げていく海賊の首根っこを掴む。
「止せ!カイル!」
アランが息切れてきた体に鞭を打ち、カイルの元に駆け寄ろうとした。
が、足元に転がっていた屍に足を取られ、転ぶ。
急いで体を起こした時には、そこは赤が飛び散っていた。
真っ白なシャツと肌を血に染めるカイルが笑って立っている。
「俺の“自由”を奪うなんて、ゆるさない」
悲鳴をあげる間もなく、海賊達は斬り裂かれ、海に落ちていく。
「死神船!!カイルから離れろ!!」
アキが指示を飛ばし、固まっていた船員達が船内へ逃げ込む。
悲鳴と怒号が船内を響かせた。
いつの間にか二本の剣を手に持ったカイルは、次々と敵か味方かも確認せずに、斬り続ける。
まさしく、狂。
飛び交う赤が、真白なカイルをより強烈に魅せる。
誰もが、息を呑む。
「・・・・・と、まらねぇぞ・・・・これは・・・・・」
アランが血塗れの体を起こし、暴れまくるカイルを只呆然と見つめた。