海上船内物語
□捨
□ □ □
深夜の1時。
眠っていた船長、アキは違和感を感じた。
(・・・・・・・下が煩い・・・・・・・・。)
からん、と無人の筈の甲板で物音がするのだ。
アキはコートを羽織、長刀と銃を持ち船長室から出た。
脆い造りの階段を駆け下り、ゆっくりと甲板に出る。
「誰だ」
広い船内に、アキの声だけが木霊する。
そこには人間の姿は無い。
(聞き間違いな筈が無い)
コツ、コツ、とアキは歩を緩めない。足音が甲板に響き渡る。
「ん?」
ふと、アキの目に引っ掛かったもの。
薄暗い、船体の壁に掛けてある、人間。
そう、まるで洗濯物干し竿に干してある洗濯物のように。
“人間”は掛かっていた。