海上船内物語
黙っているアキに、シーザが近付く。
「お前がした目隠し。あれ、ガルフの血痕を隠す為だろ?ガルフを殺った男の娘に、よくそんな情けがかけられるよな?」
「・・・・・・お前には関係ない」
「あぁ、そうだな。最近抱いてない女も抱けた事だし、俺はどうって事ねぇよ」
シーザが硬直しているカイルの手首をアキに差し出した。
「・・・・・・お前の事だな。きっと海賊がカイルを狙ってるのに気付いて、あの隠し部屋にこいつを隠したんだろ?ご丁寧に動けなくして」
カイルの手首には、痣のような痕がしっかりと付いていた。
「・・・カイルを守る為の枷で、カイルが苦しむのは想像もつかなかったろうな、アキ」
シーザが薄く笑う。
ずっと固まったままだったカイルが、視界を遮る大きな手を退かした。
「・・・・・こいつは、俺が・・・・・ころす、」
どん、とシーザを突き放し、カイルは定まらない焦点を漂わせながら、はっきり言い切った。
「お前が?」
アキがつい、零れたように口を開いた。
「アキがころすなんて、許さない」
その場に冷たい潮風が吹いた。
血臭が遠くに運ばれていく。
「・・・・・・・・・・、」
次を続けようとするカイルの口を、シーザが手で覆う。
カイルが不服そうな顔をし、シーザを睨んだ。