海上船内物語
ベランダで休んでいたリゲは、珍しい客に眉を寄せた。
「・・・・何だ、今日は珍しく一人なのか」
「他の船員は疲れているだろうから休ませている。今日は俺一人だ」
「・・・疲れている?何にだ」
万年問題を起こしてばっかいる、ただの不良軍団が、とリゲが毒付いた。
アキは無言でベランダの机に座る。
「・・・“ベイズラリア”と顔を合わせてきた」
静かにアキが呟くと、リゲは立ち上がった。
「・・・・・・なんだって?本当なのか、それは」
「あぁ。おかげでこっちの船員が欠けたがな」
リゲが慌てたようにアキに問い詰めていく。
その様子にアキは不機嫌を顕に溜め息をついた。
「潰せなかった。予想外の事があったんだ。」
「死神船が“ベイズラリア”を潰せなかった?!何があったんだ」
「カイルだよ。この前連れて来た、あの小さい」
切羽詰まっていたリゲが「は?」と間抜けな声を漏らした。
「カイルって・・・・、いかにも貧弱そうな・・あの少年がか?」
「あぁ。正しくは少年、ではなく少女、だったがな」
リゲが吹き出した。