海上船内物語
「・・・・女、だったのか・・・・・・」
「あぁ。船員も動転してな。勿論、向こうの数も半端じゃなかったんだ。異国の海賊だって居た。やはり、数には勝てん」
腕を組み、机に足を掛けながらアキは剣を抜いた。
「見ろ、剣が使いすぎで欠けてしまった」
アキが見せる細い剣身は、がたがたに欠けてしまっていた。
リゲがその剣を見て黙る。
「・・・・・・死神船は全力を尽くしたのだな?」
「あぁ。無論、この様だったのだがな」
アキが自嘲するように笑った。
「・・・・・・それで、その“カイル”と言う男・・・、いや、女はどうなったのだ?」
「連れて行かれたよ。シーザにな」
リゲの眉が動く。
「今、何と?」
「シーザ、と。」
「ガルフの舎弟だった、あのシーザがか?」
「あぁ。アイツ、正体を眩ましていたと思ったら、まさか一番嫌っていた海賊になっていたとはな・・・・・・・」
アキが視線を落とした。
リゲも何も言えない、と言う様に肩をすくめる。
「・・・・・・裏がありそうなんだ。シーザは、そんな無慈悲な事はしない」
アキはリゲを一直線に見た。