海上船内物語
「お前はまだシーザを信じてなどいるのか?」
「・・・信じるも何も、あいつがそんな出来たタマだと思うか?」
ベランダから見渡せる海に目をやる。
港で待っている死神船の姿が見えた。
「・・幼い頃から、あいつの事は知っている。雑だが、優しくて心のある奴なんだ。ガルフの“子供”のようなものだった」
「だが、何故ガルフの教えに背くような道に行ったのだ?海賊と言うものがあいつの一番嫌っていたものだろう」
リゲが辛辣にアキの言葉を跳ね返す。
「俺に、あいつを消せと?」
「それが、お前の仕事だろう」
潮風でリゲの金糸のような金髪が靡く。
「ガルフの頃もそうだっただろう。政府には逆らわない条件で、今までやって来たんだ。そうやって、ガルフが決めたんだろう」
アキがリゲを睨んだ。
その視線をふいとかわすリゲ。
「リゲ。貴様に今から実に不可解な話をしようか。この話の中心に立つ人物は“カイル”だ。いいか、良く聞けよ」
「カイル?あの小さいのが?」
「黙って聞け。
カイルは大海賊連盟トップ、アラン・ベレナイシーの娘だ。その兄貴も先日顔を出した。
死神船を襲ってきたのも、カイルを手に入れるのと、死神船を消す事の二つだったようだ」
リゲが豆を食らった表情になる。