海上船内物語
「誰だ」
近寄ってみるも、返事は無い。
その“人間”のコートを引っ張り、甲板に引き摺り落とす。
ごろり、と力無く顔が傾いた。
顔立ちは極一般的なヨーロッパ系の顔。
少し褪せた色の金髪が濡れて頬に張り付いていた。
体を見ると細く、筋肉質の様だった。
(まだ若い・・・・・・少年か。いいとこ14、5だな。親にでも捨てられたか?)
アキはその長い刀を抜いた。
そしてその刀面を少年の頬につける。
「うっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(生きてるか)
刀面の冷たさに少年が一瞬体を強張らせた。
「おい、起きろ小僧」
アキはその少年を足蹴に、起こす。
「いたっ」
「起きろ」
薄っすらと、少年の瞳が開かれた。
ヨーロッパには極一般な、金目だ。
「貴様、何故この船に居るのだ」
「・・・・・・・・・・・あ、ここ・・・・・?」
「ここは俺の船、死神船だ。お前親にでも捨てられたか?」
海水を飲んでいるのか、少年は体を起こし勢い良く咽込むと、急に立ち上がった。