海上船内物語
「それでは何故、カイルが死神船に入っていたのだ」
「騙されていたんだよ、俺らは。アランの指図でカイルは死神船に潜り込んだんだ。勿論、スパイとしてな。カイルは情報を漏らさなかったらしいが」
「スパイ・・・・・・・・、
それでは、どうしてそこまでして“ベイズラリア”はカイルを取り戻しに来るんだ?」
アキは剣を収めた。
表情が険しくなる。
「・・・・・・俺も、予想していなかった。」
「何をだ?」
「カイルは俺が予想を遥かに超えていた。」
「だから、何をなんだ?」
「剣の実力、だ。あいつの箍が外れたら、きっと俺でもぎりぎりと言う所だろう」
アキが瞼を閉じた。
過去を思い出すように、ゆっくりと語る。
「赤、だ。奴の周りは赤しか色が無かった。剣を振るう度に、鮮血が舞い、そして次を狙う。身の動きが俊敏で、形は全く成っていないが、速さは尋常じゃない」
「流石はアランの娘、と言うところなのか?」
「いや、分からん。アランもカイルの発狂には手が負えない、などと呟いていたからな」
アキは立ち上がった。
「政府の狗、か」
「は?」
「よく出来た名前だよ。全くその通りだ」
「どうした、アキ。乱闘で頭でも斬られたか」
アキがリゲを睨み上げた。