海上船内物語
「・・・・・・思い出せ、リゲ。ガルフは確かに“政府には逆らわない”、それを条件に政府に食わせてもらっていた。それは間違いない」
「・・・・・?あぁ、そうだが・・・・・・」
「ガルフは俺が仲間を斬る事を笑って見過ごすと思うか?」
冷たい潮風が二人の間を通り抜けた。
「・・・・・・アキ、お前まさかシーザを見過ごすつもりじゃ、」
「俺はシーザを殺さん。
死神船は“海賊”の存在を消す役目を持っている。それは守る。だから、俺はシーザを海賊から死神船に連れて来る」
リゲが机を叩いた。
金髪が美しく靡く。
「・・・・・・ふざけるなよ、アキ。今まで死神船を雇ってやったのは誰だと思っている。寝返るつもりか」
「寝返るも何も、俺は俺の意地を通すまでだ」
「政府には逆らわない条件な筈だ!」
「逆らったつもりはない。ただ、シーザを死神船に入れることを許せ、と言っているだけだ。ついでにカイルも手に収めるつもりだ」
リゲは呆れたように顔を手で覆った。
そして、間髪入れずにアキに言い寄る。
「お前は頭がおかしくなったのか!あれ程、海賊を毛嫌いしていたお前が、その娘を取り戻すだと?どうかなったのか!」
アキは口元に薄っすらと笑みを浮かべた。
ぢゃらりと腰やブーツに付いている金属を鳴らしながら、リゲにゆっくり歩み寄る。