海上船内物語
「・・・・・・帰りたい」
「あ?何言ってんだ、まだまだだろ?」
「人が、鬱陶しい。」
黒髪が揺れる、シーザの横に寄り添うように、彼女、カイルは苛々と足を早める。
「だからこの格好で来るの、嫌だったの」
「皆お前が綺麗だから見てんだぜ?嬉しくないのか」
「嬉しいもんか、気持ち悪い」
上品に仕立てられたシルクの純白ドレスを身に纏い、細い金髪を靡かせ、颯爽と歩く。
本人が嫌がるヒールのある靴が、軽快に響いた。
「どうなってんだぁ?海賊軍に女が居るぞ」
「ほらあんた、関わるとろくな事がないわよ」
異様な光景だった。
カイルの周りは全員海賊で、決して気品が良いものではなかった。
何百と居る大人数を従え、市の街道を堂々と歩く海賊軍には、どうしてもカイルは不釣合いだった。
「・・・・・・内臓が飛び出そう。この腹を絞めてる板さえ無ければ、笑顔のひとつやふたつ浮かべれるのに・・・・・・」
「板じゃなくてコルセットな。文句言うんじゃねぇよ。良いんだよ、見栄えが良ければ」
シーザは文句を溢すカイルの頭を軽く小突いた。
カイルが勢いよく、シーザを睨み返す。