海上船内物語
「大体、何で“見せびらかし”なんてしてるのさ」
カイルは慣れない靴にバランスを崩しながら、シーザに聞いた。
「死神船を挑発してんだよ。噂が広がって奴らに情報が入ったら、来るかもしれねぇだろ?」
「・・・・・・・・・知らない」
カイルは聞かなければ良かった、と言う様に眉を寄せ、早く船に戻りたいが為に、歩を早めた。
「何だよ手前ぇ、アキが恋しくないのか?」
からかうようにシーザがカイルを小突くと、食いつくようにカイルはシーザを睨み上げる。
「勝手に妄想するな、間抜け」
「間抜ってお前の事か?昨日、油断してみすみす俺に抱かれた癖に」
「油断なんかしてない!」
「あー怖い怖い」
シーザをひと睨みして、次第に近付いてきた海を見ると、カイルは表情を緩ませた。
「何にやついてるの?」
ひょこりとシーザの横から顔を出す、アル。
「兄ちゃん。だって、今まであんな窮屈な部屋に入れられてたんだよ?久し振りに海見られるから、顔が緩んだ」
「窮屈かぁ?良い場所だろう?海賊狩りにも、海軍にも、政府にも見つからねぇ、最高の隠れ処じゃねぇか」
「海が見えないのが、欠点」
アルがカイルの頭を撫でた。
「けっ、この妹馬鹿」
「船長、嫉妬ですか?」
「違ぇわ!」
水面が輝く、海が見えてきた。