海上船内物語
「おっさん、入るぜ」
返事も聞かずにシーザは扉を押し開ける。
部屋の中に居たアランが、丁度睡眠を取っていたようで、驚いたように目を覚ました。
「・・・何だ、お前らか」
「おっさんよくこんな危ねぇ海で寝れるよな」
「海賊たるものどこでも寝れる度胸が無いとな!」
シーザは呆れたように肩を竦めた。
「で、カイルのお披露目はどうだ?手応えありそうか」
「あぁ。噂が噂を呼ぶ。奴らの耳に入るのは、多分一週間もしねぇぜ」
「そうか。」
アランは上機嫌そうに、椅子に座った。
「カイル、お前その格好してりゃちゃんと女に見えるもんだなぁ」
「・・・・・・うるさい。私は気に入ってない」
「もう幾つだっけか?あれから三年経ったから・・・二十歳手前か」
「知らない。歳なんて覚えてるものか」
つん、とカイルはアランから視線を外す。
シーザは叱咤するようにカイルの頭を軽く小突く。
「・・・・ふん、もうそんな歳になったか・・・」
皺が更に深くなった顔を緩ませ、アランは豪快に笑った。