海上船内物語



(何で今まで気付かなかったのか・・・・・、

こんな近くに該当者が居た)



「カイル・・・・・・」



カイルの熱の篭った瞳は、真っ直ぐシーザに向けられた。



(・・・シーザは、私を愛でるように犯す)



「・・・・・・・・っ、は・・・・・・・、」


(今まで、私を“もの”でしか思ってなかったくせに)



「・・・・・・・シーザ、嫌い・・・・・・・・・」

「・・・・・・知ってる」



(本当は、誰かに自分を気付いて欲しい癖に)



「俺は、好きだぜ・・・・?」

「知ってる。」



ふわり、と鼻先にシーザの黒髪が触れる。




(“あの頃”になんか戻れない)


カイルは、目を閉じた。
瞼の裏に移る人物を振り切るように、強く目を瞑ってから、シーザの背中に腕を回す。



月が、不気味に二人を照らした。




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