海上船内物語
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ざ、と潮風が吹く。
金糸をふわりと靡かせた。
視界に広がるのは、真っ青な海。
暖かな日光が海面をきらりと照らす。
彼女は、今にも海に落ちそうなくらい身を乗り出し、その青色を眺めた。
楽しげな鼻歌が聞こえる。
「カイル、ご機嫌じゃないか」
「・・兄ちゃん。だって、凄い久し振りに船に乗ったんだよ?気分が上がって仕方が無い」
カイルは、後ろから声を掛けてきた兄に、人懐こい笑顔を浮かべた。
アルもつられて固い表情が緩む。
「この潮の匂い、たまらない」
「船長に感謝しないとね。でも何で、急にカイルを連れ出す気になったんだろうね?」
「シーザって基本気分で動く人だから、今日の気分だったんじゃない?」
「うん、納得」
帆に風を受け、ゆっくりと前進する船の甲板で、カイルが歩き回る。
「やっぱり、海の上って気持ち良いよね」
「うん」
カイルが振り返った。
アルは目を細める。