海上船内物語



「・・・・今日の風はどう?」

「南吹き。大丈夫、今日一日天気は崩れないと思う」

「流石だね」



得意げにカイルは笑った。



「何でお前は風に詳しいのかね?」

「私が子供のとき、海に居すぎたからだよ」

「あぁ、確かに。毎日居たもんね」



カイルがふと目を細めた。

そして、その先をアルが見つめる。



「兄ちゃん、あれ・・・・・・・・」


みるみる内にアルの眉間に皺が寄る。
しまった、と呟きながら、カイルの肩を抱いた。



「カイルは中に入ってな」

「え、でも・・・・・・・・・・」


後ろを振り返ろうとするカイルを船内に押し込んで、アルは溜め息をついた。



「・・・・・・領海、に入っちゃったか・・・・」


顔を覆うと、アルは咄嗟に走り出した。



冷たくなっていく風が、船を洗った。




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