海上船内物語
「外見は変わったが、その能天気な思考は相変わらずのようだな。まさか貴様、俺を忘れたとでも言いたいのか?」
次々と頭上から降ってくる言葉の槍。
カイルは“影”を勢い良く睨み上げた。
声に耳を澄ませ、張り付いた声が喉から出る。
「・・・・・・アキ、・・・・?!」
「遅い。認識するのにどれ位の時間が要るのだ」
カイルは勢い良く掴まれた頭を振り、“影”の近くで目を凝らす。
「・・・・・・暗すぎて、見えない・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
一瞬沈黙が走り、“影”はカイルと反対方向へ進む。
“影”は机の上の小さくなった蝋燭を手に取り、またカイルの方へ向かう。
黒髪が、視界に見て取れた。
「ア、キ・・・・・・・・!!」
「貴様、目が大分悪くなったな」
蝋燭の微弱な光で照らされた、顔。
不機嫌そうに眉を寄せて、呆れたように肩を竦めるその“影”は、アキの姿だった。
「何でアキがここに居るの?!」
「今更か。」
アキは蝋燭を床に置き、ベッドの端に腰を落ち着ける。