海上船内物語



「うっわーこえーよこの階段。今にも崩れそうじゃねーか」

「黙って着いて来い。海に落とされたいか」


脆い階段を上り、アキは船長室にカイルを入れた。



「これに着替えろ。それは船員と同じ服だ。」

「かっけー!これコートか!なんかそれっぽくなってきた!」

「だがな。貴様他の船員に比べて小さいんだ。今幾つだ」

「15。」

「一番年下だな。まぁお前の成長を願う。コートはでかくても知らんからな」

「全然いい。今年中に成長期来る筈だから」


犬のような人懐こい目でカイルはアキを見上げた。



「フン、男が小さいと言うのは見っとも無いな」

「何だと?!港じゃ少し小さい位の男が可愛いって流行ってるんだ!」

「愛玩動物のようで可愛いと馬鹿にされてるんだ、貴様は。まぁ今夜はそこで休め」

「・・・・・・・・・・アキは」

「俺は甲板で夜を過ごす」


バタン。

船長室と書かれた扉は閉められた。



“Aki twelve years old.”

コートの裾と一緒に小さく縫われている紙にそう書いてあった。



「むかつく!あいつ自分がガキの時のコート寄越しやがった!!それなのにサイズでかいって!!腹立つー!!」



カイルは一人地団駄を踏んでいた。







< 17 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop