海上船内物語
「うっわーこえーよこの階段。今にも崩れそうじゃねーか」
「黙って着いて来い。海に落とされたいか」
脆い階段を上り、アキは船長室にカイルを入れた。
「これに着替えろ。それは船員と同じ服だ。」
「かっけー!これコートか!なんかそれっぽくなってきた!」
「だがな。貴様他の船員に比べて小さいんだ。今幾つだ」
「15。」
「一番年下だな。まぁお前の成長を願う。コートはでかくても知らんからな」
「全然いい。今年中に成長期来る筈だから」
犬のような人懐こい目でカイルはアキを見上げた。
「フン、男が小さいと言うのは見っとも無いな」
「何だと?!港じゃ少し小さい位の男が可愛いって流行ってるんだ!」
「愛玩動物のようで可愛いと馬鹿にされてるんだ、貴様は。まぁ今夜はそこで休め」
「・・・・・・・・・・アキは」
「俺は甲板で夜を過ごす」
バタン。
船長室と書かれた扉は閉められた。
“Aki twelve years old.”
コートの裾と一緒に小さく縫われている紙にそう書いてあった。
「むかつく!あいつ自分がガキの時のコート寄越しやがった!!それなのにサイズでかいって!!腹立つー!!」
カイルは一人地団駄を踏んでいた。