海上船内物語
よく見ると、その肉片は人のものだった。
その劣悪さに、カイルは口元を押さえながら、後ずさりをする。
どん、と背中がアキにぶつかった。
「なんだ、匂いに酔ったか」
「酔ってなんか・・・・・・・、」
アキに押されるまま、カイルは甲板の中央に立つ。
「あ、船長。シーザってのは、黒髪でしたよね?」
声がする方に振り向いたら、カイルは声を漏らした。
「ウル・・・・・・・・!!」
歩きながら近付いてきたのは、短髪で細身のウルだった。
カイルに気付き、爽やかな笑顔を見せる。
「シーザは、どこだ?」
「まだ手をつけてません。どうしますか?」
「いい。そのまま、連れてく。」
「了解です!」
カイルは、二人を呆然と眺める。
気が抜けて、甲板に広がっていた血溜まりに足を突っ込んでしまう。
血がカイルに跳ねた。
「カイル、久し振り。随分変わったな」
ウルの笑顔とは裏腹に、手には血塗れの剣が握られていた。